防衛タブー視のツケ 静かに消えていく企業

日本の国防を支えてきた多くの企業がひっそりと防衛の分野から手を引いている。顧客は限られ、輸出も難しく低収益が常態化していて、継続が難しいからだ。厳しい現実を直視することが、日本の未来のための第一歩だ。

2021年、装備品契約で前代未聞の珍事が起きた。防衛省が水陸両用の救難飛行艇「US-2」の胴体と主翼(外翼)を分けて、それぞれ別の年度に発注したのだ。製造する新明和工業は困惑するが、防衛省は国産装備品を手当てする予算を工面できないという理由だった。一体、防衛産業で今何が起きているのか。

新明和工業が製造する救難飛行艇US-2(左)と、三井E&S造船が玉野艦船工場(岡山県玉野市)で建造し、進水する新型多機能護衛艦(FFM)「くまの」(右、2020年)。三井E&Sの艦艇・官公庁船事業は2021年10月、三菱重工業の傘下に入った(写真=右:山陽新聞/共同通信イメージズ)
神戸市の湾岸沿いに建つ同社の甲南工場。「『波消し』の部材をこれからも調達できるかどうか」。海上自衛隊への引き渡しを待つUS-2について語る田中克夫常務執行役員の表情はどこか浮かない。波消しは着水時にしぶきの跳ね上がりを抑える部材だが、メーカーの撤退でチタン合金が手に入らなくなっているという。

それだけではない。ランディングギアの金属部材の鍛造を手掛ける住重フォージング(神奈川県横須賀市)が「もうできない」と音を上げた。主翼や水平尾翼などを供給する三菱重工業も「利益が出ない。やめさせていただく」と告げてきた。一定期間供給してもらう約束は取り付けたが、その先は自力でやらざるを得ない。約10年前まで1500社ほどあったサプライヤーの数は100社ほど減った。

原因は、市場価格がほとんどない装備品独特の契約方式だ。防衛省はメーカーに対して材料費など原価を積み上げ、一定の利益を上乗せして発注する。発注時には5~7%の利益率が約束されているが、間接費が十分に盛り込まれないケースが多い。専用治工具は防衛省から手当てされるが、その後の維持管理費はほぼ新明和の負担になる。

5年に1機と発注も少ない。製造期間外の人件費や設備などの固定費が重く、直近の3機は全て赤字だ。「サプライヤーとの価格交渉は厳しく、我々が値上げをのまざるを得ないケースも多い」(田中常務)と嘆く。

元航空自衛隊補給本部長で元空将の吉岡秀之氏は「適正な調達を目指し(15年に)防衛装備庁が発足したが、機能していない。原価の見直しを進めなければ産業として成り立たない」と警鐘を鳴らす。

発言力が低下する防衛担当
ここ数年、企業が防衛事業から撤退する事例が相次いでいる。20年にはダイセルがパイロット緊急脱出装置から、18年にはコマツが軽装甲機動車(LAV)から撤退を表明。「イラク派遣にも使われ海外でも好評だったのに」とある自衛隊OBは驚く。

状況の厳しさは各社の防衛事業のスケールを見れば明白だ。同事業の世界トップ5は米企業が占め、1位のロッキード・マーチンは全事業に占める防衛事業の比率が約9割に上る。民需も多いボーイングを除けば、各社とも6~8割を防衛事業が占めている状況だ。

日本の防衛関連企業は防衛の比率が低い
●防衛売上高世界と日本のトップ5同士の比較

https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/00923/?n_cid=nbponb_fbbn&fbclid=IwAR3D8QZj6NeFjWwKhQHF7LJlLUg6pfrAajqTok_JGVp8CZrwSfvenGEcKiQ

最後までお読みいただきありがとうございます

▼この記事をシェアする